チャレンジする人生でありたい|心と体の成長を促す運動遊びvol.2

2014.12.24

【人気大学准教授による、子どもの心と体の成長を促す運動遊びコラム】を担当しています村田トオルです。今日は、前回のコラムの続きをお話します。

 

家族4人が生活していくために選んだ道は,時給1000円の派遣型日雇いバイトでした。前日に翌日空いている時間帯を事務所に伝えると,なにかしらの仕事が来ます。でも内容は選べません。もう必死でした。

 

慣れないヘルメットをかぶり,ドライバーを持ち,イベント設営,パチンコ店の改装,個人宅のリフォーム,引っ越し手伝い,大金庫の移動,お葬式の受付もしました。持ち歩いていた水筒のお茶がなくなると,駅のトイレの水を飲んだり,弁当はご飯にふりかけだけ。100均,コンビニでは安易に買い物をしない・・・

 

当時,中学生,小学生の息子たちは友達とボーリングやカラオケに行き始めました。本来なら特別におこづかいを渡すのでしょうが,それすらもできませんでした。思うように仕事依頼がないと,いくら最終ジャッジをした奥さんといえども機嫌が悪くなります。面と向かって言われたことはありませんが,食器洗いがいつも以上に荒く,洗浄機に投げるように食器を置いていく様子をみるたび,自分の居場所がなくなる思いでいました。

 

世間的にはいいことをしていても,家族に対しては言葉にできないくらい経済的不安を強いていたんですよね。仕事ならハローワークに行けば,こだわらなければすぐにあります。家族のことを考えるとそうすべきだと思いましたが,もしそうすると「これまでの自分の生き方を自分で否定してしまう」という納得のできない人生となります。選ぶべき道はただひとつ「運動遊びの開拓者になること」でした。

 

自宅近所の塩瀬中央公園(西宮市)ではじめた元気っずクラブも口コミで参加者が増え,全国からスポーツ運動指導者が見学に来られ,テレビ,新聞,子育て団体からの表彰など,少しずつですが,認められはじめました。このような活動に共感し,応援していただける人も増え(釜井さんもよき理解者の一人です),人前でお話しする機会が格段に増えました。

 

また研究者としても学会発表や論文で運動遊びの効果を実証した結果,26連敗しましたが,大学の教員にも採用され,自分の理論が認められると同時に,経済的な不安も解消されました。

 

振り返りますと,こうした波乱万丈を経て,今があります。そして,どんなに将来に不安を感じた時にでも「この先どうするん!」と決して口にしなかった奥さんに感謝です(もちろん本人は言いたかったでしょうが・・・笑)。

 

今,お話しさせていただいている子育てのお話は,「10年前に子育てに悩んだ自分にだれかこんな話をしてくれたらよかったのに」という内容なんですよ。

なぜかというと,教室同様に子育てに対しても「男の子は厳しく育てる」だったからです。

なにしろ「なにやってんねん,そんなことでどうする」なんて言葉を小学1年生になったばかりの長男に平気で(本人は当たり前)言っていたくらいですので。でもそんな子育てもやがて大きなツケが回ってきたのです。

 

小4になるころから長男が不登校気味になり,6年生では2学期にほとんど学校に行かず,中学に上がって少し落ち着いたものの行ったり行かなかったり・・・

親が外で働いている時間に,家に不登校の子どもがいるという状態はなんともいえない,情けない気持ちでいっぱいです。子育てに失敗した親のレッテルを貼られているようで。

 

でもなにかができるわけではなく毎朝,布団を頭からかぶって出てこない長男に「今日は行くって約束したやろ。行けよ」って怒鳴る毎日でした。そんな怒鳴るばかりの日々に少し疲れたとき

「人生100年の時代。たとえ2~3年ひきこもる生活があったところでそれもまた人生やん」と

思える心の余裕ができました。また大学院で子どもの心理を勉強していた時期でもありましたので,「不登校はなにかのサイン。本人が一番悩んでいる。自分で答えを見つけるように見守ろう」と思えたのです。

 

それからは,焦らせず,怒鳴らず,友達と比較せず,ただ見守ることに徹底しました。そうすると,少しずつ長男に変化が見え,ある日突然,生き生きと学校へ行き始めました。研究で出した結論は我が子の子育てでも活かせました。ですので,決して理屈っぽくない内容なので,また機会があればぜひお聴きくださいね。

 

教員としての姿をお話しますと,学生たちからは「トオル先生」と呼ばれています。

主に実技科目を担当していて,チーム分けをする場合でも,「俺も入れて」と輪に入ります。

ドッジボール,バレーボール,バドミントン,卓球,ソフトボール・・・どんな時でもガチ勝負です。特に男子相手は(^^) おとなげないとよく言われますが,率先して楽しむ姿を学生たちに見せているのです。

 

もちろん20歳前後の学生と対等に動くためには日頃からの健康管理とトレーニングが必要です。

実は今,筋トレにハマっていて,きっかけは去年ベストボディジャパンというかっこいいカラダを競うコンテストに出たことからなんです。ボディビルとは違い,上半身はだかでジーパンとサーフパンツだけの審査です。そしてステージ上でモデルのように歩き,アピールするポーズをとります。去年はセミファイナル敗退でしたので,今年はなんとかその上をと思い,仕事や研究の合間を縫ってジムに通い,食事にも気をつかい,そして臨んだ7月の大阪大会。激戦でしたがファイナルまで進み,5位入賞で12月に開催される日本大会への出場権を得ることができました。

自称:ベストボディ・ティーチャーでもあります。

 

一体,あなたは何を目指しているのですか?と言われそうですが,自分に可能性がある限り,それを信じてチャレンジしたい人生でありたいだけなのです。

これからの夢というか野望ですが,現在,子どもの運動・スポーツは

①習い事(サッカー,スイミングなど)

②競技スポーツ(プロのジュニアチームなど)が主流です。

この2つはスポーツが好き,得意という子どもには手厚いことですが,運動がイヤ,あるいはゲームばかりに夢中の子どもは,その場所がありません。

 

ですが,お気づきのように体を動かせることは,健全な生活習慣を作るうえでかかせないことです。でもその場所がない。

ないなら作ろうということで,③として運動遊びの普及促進を考えています。でも運動遊びは「何をしているのかよくわからない」「遊びに意味があるのか」などマイナスや否定的な考えがあります。だからこそ「時代へのチャレンジ」と言われるゆえんなのです。

 

このように少し違った視点や考え方を持った熱苦しい奴ですが,今後もどうぞよろしくお願いいたします。

 

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村田トオル
大阪青山大学健康科学部子ども教育学科 准教授
・NPO法人日本健康運動指導士会兵庫県支部長
・第26期西宮市スポーツ推進審議委員
・日本体育協会スポーツ医科学専門委員会メンバー
・同志社大学健康体力科学センター嘱託研究員

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