健康に関する子育てQ&A④|心と体の成長を促す運動遊びvol.14

2015.10.01

ここしばらくは「からだの仕組みを知って子育てをするとちょっと楽になりますよね」という視点から「健康と子育ての関係」を書いてきました。

今回は・・・

 

◆なぜ「いい姿勢で食べなさい」あるいは「食べるときはいい姿勢で」と言うのでしょうか?

お子さんが,寝転んでおやつを食べている。

椅子にふんぞりかえってご飯を食べている。

親としては,とっても気になる光景です。

なぜなら「いい姿勢ではないから」ですよね。

 

では,なぜいい姿勢でないといけないのか,まずは「お行儀悪い」「そんなかっこうで外出先で食べたら,しつけを疑われる」という外面や体裁の理由があるでしょう。

もちろん,それはたいせつなことでしょうが,実はもっと奥が深いのです。

 

健康に直結する重要な理由があります。

まず,食べるときは,どうします?

栄養があるものを選ぶかどうかは別として(笑),口に入れたあと必ず噛みます。

これを「咀嚼」といい,飲み込みやすいように柔らかくなるまで噛むことをいいます。

次に,細かくしたものを胃に送るために飲み込みますね。これを「嚥下」といい,はじめて口にいれた食べ物が栄養分となるための通過点となります。

 

ここで,人間の本当にすごい仕組みをご紹介しましょう。

口で噛んで,「飲み込む」・・・ちょっと待ってください。

そこから2つの道があるのをご存知ですか?1つは胃に送る,食道という道。

もう1つは,吸い込んだ空気を肺に送る気管という道。

位置的には,前に気管,そのすぐ後ろに食道があります。

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すこし「あれっ?」と思いませんか,入り口は1つなのに,中で役目の違う道が2つ並んでいる・・・

実は喉の奥のほうに「喉頭蓋(こうとうがい)」というふたがあります。

その役目は,食べ物が降りてくる場合は自動的に気管にふたをして,食道に行くようにします。

逆に,呼吸している場合は,喉頭蓋は開いて,空気を取り入れるのです。

この「咀嚼→嚥下」という一連の動作が,うまくいかない場合はどうなるのでしょうか?

気道に食べ物が入ると,炎症を起こします。

そうなると重大な病気となる可能性が大なのです。

ところが,そんなことにならないように,防御反応として,あることが自動的に起こりますよね。

そう「ゲホッ」とむせかえることです。

ゲホッとすることで,本来気管に入ってはいけない,食べ物を外に出しているのですね。

 

ここで,思い浮かべてください。

この「ゲホッ」っとなるとき,たいてい,あわてて食事をしたり,あるいは,寝ながら食べたり・・・そう「いい姿勢」ではないのです。

「咀嚼→嚥下」がスムーズに行われる前提条件が「いい姿勢」なのですね。

「いい姿勢」はお行儀がよく,家庭でのしつけもできている象徴ではありますが,自分自身の健康のためでもあるのですね。

 

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村田トオル
・大阪青山大学健康科学部子ども教育学科 准教授
・NPO法人日本健康運動指導士会兵庫県支部長
・第26期西宮市スポーツ推進審議委員
・日本体育協会スポーツ医科学専門委員会メンバー
・同志社大学健康体力科学センター嘱託研究員

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