子どもの「できた!」を一緒に喜ぼう|心と体の成長を促す運動遊びvol.4

2015.02.02

子どもの「できた!」を一緒に喜びましょう。

 

平成19年10月から4年半続いた,西宮市塩瀬中央公園での元気っず®クラブ。

毎回子どもたちの成長ぶりに驚かされたものでした。

 

一つのスポーツを僕が主導型でするわけではなく,鬼ごっこ,綱引き,リレー,かくれんぼなど,からだを思いっきり使った遊びを,子どもたちが行う順番を決めて,ルールも自分たちで話し合って決めることもあります。

 

では,指導者である僕の役目は???というと,ルールがこんがらがってきたとき,順番を決める時にもめたときなど,子どもたちだけで解決できそうもないと判断した瞬間に出番が来ます。

つまり,便宜上は指導者ですが,「子どもたちを一歩下がったところから見守っている」役目を果たすのです。

 

なんだか,こんなことを書くと,めちゃくちゃな運営だな~と思う人も多いのではないでしょうか?

そうなんです,遊びは一見でたらめで,法則がなく無秩序な場面が多いです。

ただそれは逆の見方をすれば,「自由空間」「のびのび空間」「思い切り空間」という心の面に関わる空間でもあるのです。

 

こんな感じの元気っず®クラブですが,毎回終了後に広場横の高さ約4mの崖のぼりをするのが恒例となっていました。

登りきったところにロープをくくりつけ,準備をすると,もう子どもたちはきちんと1列に並んでいるのです。(かわいいでしょ!)

先着順で我先に並ぼうとする姿は見ていてとても微笑ましいです。

 

この恒例となっている崖のぼりですが,一人の男の子だけがしませんでした。

その時間はずっと友達が登っている姿を見ているだけなのです。

付添いのお母さんはさぞかしはがゆい思いであったことでしょう,何度も「Aちゃん,今日はやってみる?」と言いますが,Aちゃんは「しなーい」の一点張り。

 

ある日のこと,そのAちゃんは

「今日終わってから,崖のぼりする~」と言ってきました。

その顔は生き生きと輝いており,終了後は一目散に走って,先頭に並びました。

そして,登り始めました。

お母さんは「大丈夫かな~」と心配そう。

周りのお母さんたちも「Aちゃん,ゆっくりでいいからね~」と

決して焦らせるような応援ではなく,見守っていました。

 

補助者である僕は,「そうそうAちゃん,右手と左手をかわりばんこに握ってね」「すぐ後ろに先生いるからね」

と技術的な指示はせず,ペースに合わせて後ろから登って行ったのです。

途中,一度だけ「こわい」と言いましたが「降りる」とは言わなかったので

「もうてっぺんのほうが近いね」とだけ声をかけました。

こうして恐々ながらも最後の一歩を登り,到達した瞬間,周りから拍手が沸き起こりました。

 

その日の夜にAちゃんのお母さんからメールをいただきました。

こう書いてありました。

『帰宅するなり,「俺お兄ちゃんになってん!」とこれまでにない

自信あふれた笑顔で,頼んでもしてくれなかった服をたたんだり,

妹の世話を進んでしてくれました。

子どもにとって「自分の力でできた」っていう体験は大切なんですね』

 

子どもは「できた!」ってよく言ってきますよね。

その「できた!」の喜びを我が事のように分かち合い,共感してください。

子どもにとっての「できた!」はそのことだけでなく,

日常の生活全体にいい影響を与えるのですから。

 

次回も、【人気大学准教授による、子どもの心と体の成長を促す運動遊びコラム】をお楽しみに!

 

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村田トオル
大阪青山大学健康科学部子ども教育学科 准教授
・NPO法人日本健康運動指導士会兵庫県支部長
・第26期西宮市スポーツ推進審議委員
・日本体育協会スポーツ医科学専門委員会メンバー
・同志社大学健康体力科学センター嘱託研究員

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