歯と食の話|子どもの育つ力を伸ばす口腔育成vol.5

2015.02.11

こんにちは。歯科医師の小野大地です。

今回は「歯と食の話」をしていきたいと思います。

 

食べる事は私たち人間にとって欠かせない事であり、栄養を取り入れるだけでなく、食を通じて様々な事を学び、感じる事で心身ともに成長することが出来ます。

 

“食育”という言葉を良く耳にするようになりました。
平成17年に食育基本法が、平成18年に食育推進基本計画が制定され、子どもたちが食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身に付けることができるよう、積極的に食育に取り組んでいくことが重要となっています。
このように食に対する意識が高まっているにもかかわらずしっかり食べる事が出来ない子ども、しっかり食べるだけの構造が獲得できていない子どもが多くみられます。

 

昔からしっかり噛みましょうと言われていますが、これは噛んだ力を顎に伝える事で、この刺激により口腔が成長するという事です。
しかし、今の食事は柔らかく食べやすいものが好まれ、なかなか食べない子には食べやすいように、さらに柔らかく、細かくして食べやすいように調理している傾向がみられます。

 

このような子どもの多くは、しっかり噛む事が出来ず、咬んだ力を顎に伝える構造を獲得できていません。
つまり、成長するためにはある程度の口腔の成長が必要だという事です。

 

そうならないように20回しっかり噛んでから飲み込みましょう。
なんて事を耳にしたことがありませんか?

 

そのような子ども達の食べる様子を見たり、自分でも試してみましたが、ほとんど噛んでるふりだけでした。
なぜなら、豆腐のような柔らかいものでは20回も咬む必要性がないですし、固い肉や葉物などの繊維質の多いものはクチャクチャ、モグモグして口を動かしているだけでした。

 

そこで私は、しっかり噛んで食べさせることが難しいのであれば、しっかり噛まざるを得ない食事を用意することをお勧めします。

 

食べ物を飲み込むためには水分やとろみが重要です。
それらは本来、細かく噛み砕いたものを、唾液による水分と唾液の中に含まれるムチンと言う粘液性の成分が混ざり合わせることで飲み込みます。
この単純で難しい作業ががんばったらできる!くらいの食べ物が、顎を育てるちょうどいい食べ物です。

 

その際、お茶などを置いておくと飲み込めてしまうので避けておく方がいいかもしれませんね。
大人も同様ですが、飲み物がないと食べることのできない子は要注意です。

 

次回も、「歯医者さんと一緒に考える、子どもの育つ力を伸ばす口腔育成」をお楽しみに。

 

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歯科医  小野 大地

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