自立と自律③|心と体の成長を促す運動遊びvol.9
このコラムでお話ししている<自立と自律>
3回目となりました。
言葉の持つ意味に慣れていただけましたか?
自立は,自分で物事を行うこと。
自律は,自分の立てた行動計画を,自分の力だけで行うこと。
小学生の行動変化から,
子どもが自律するには,時間がかかり,
その過程も十人十色本当に様々ですねということを書いてきました。
今回は3人目の元気っずクラブ小学生クラス(10回)での変化の過程を
書いていきますね。
◇小学2年生Cくん
≪参加のはじめ≫
・極端に口数が少なく,会話したとしてもとても弱弱しく,
たとえば,僕が「Cくん,こんにちは」とあいさつしても
聞き取れないくらいの小声でした。
・ドッジボール,相撲などは,みんなの輪の中に入るという
興味がある態度を示すのですが,自分からしようという積極的な態度はなく,
じっと見ているだけや友だちの応援(小声で)をしている姿が 目立っていました。
・かけっこリレーでは,走る姿はとても弱々しく,
決められたコーンまでの距離を最後まで走り切れず歩いていました。
≪参加の中盤≫
・僕対子どもたちの相撲をしていると,友達の応援だけだったのが
気が付くとCくんもしがみつく,もぐりこんで足を持ち上げる,
しっかりと僕の体を押すなど,明らかな積極的態度を表すようになりました。
この時はびっくりしました~(^^)
それまで,ずっと応援だけだったのに。
・元気っずクラブが始まる4時半の少し前,
公園までの階段を弾むように下りてくる姿が続き,
「Cくん,楽しみにしてるんだなー」と見てとれました。
≪参加の終盤≫
・僕は「今日は何から始める?」と最初にみんなに聞くと,
はっきりと物怖じすることなく
「鬼ごっこしたい」と大きな声で自分の意見を言いました。
・かけっこリレーでは,決められた距離を力強いフォームで
走り切ることができるようになりました。
・鬼ごっこの時に,鬼をしている僕に対し
「追いかけてみ~」とあおってくるという,
めちゃくちゃポジティブな行動が出てきました。
※ガチで追いかけたのは言うまでもありません(笑)
Cくんも劇的に変わりましたよね。
Cくんの場合,特徴的だったのが,しない時でも
じっと真剣に集中して,友達の遊びを見ていたことです。
そう,つまり『見学』をしていたのです。
みんながしている時に,していないと
「何やってるの~うちの子は!」と思いがちですし,
「あなたもしなさいよ,みんなやってるじゃない」
とついつい口に出してしまうこうともあるかと思います。
もしお子様にそんな場面があったとしても,
していない時の表情やまなざしを見てあげてくださいね。
自律心を育てるために,行動を促すことだけではないのです。
時には見て学ぶことも大切なのです。
見て学んでいる時,子どもはその子なりにその動きをイメージしたり,
自分ならこうするのになあと必ず創造力を働かせています。
そして,機が熟したときに行動に移すのです。
それこそ自律への第一歩と言えるでしょう。
次回から,しばらくは,僕がよく子育て講演でお聞きする質問とともに
その回答をご紹介していきますね。
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村田トオル
・大阪青山大学健康科学部子ども教育学科 准教授
・NPO法人日本健康運動指導士会兵庫県支部長
・第26期西宮市スポーツ推進審議委員
・日本体育協会スポーツ医科学専門委員会メンバー
・同志社大学健康体力科学センター嘱託研究員